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主に二次創作(現段階ではネギまのクロス物)を載せようと思うブログ
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「ふう、此処まで来ればもう安心じゃろう」


 村からある程度離れた所にあり、何時もネギが通っている村を一望できる丘

 にたどり着くと四人は歩みを止めた。


「もう少しで救助隊が来るはずじゃ、それまでは此処でじっとしておくのが良いじゃろう」


 そう言い、変わらず燃え続ける故郷の村に目を向けるスタン。ネギも父親から譲り受けた

 杖を両手で持って村を見る。ネカネも同じ様に丘の上から村を見下ろしていた。

 そんな三人にイリヤは何も言わず、先程から開放していた魔術回路を閉じた。

 やがて、数分が過ぎた。決心が出来たのか、三人は再びイリヤと向き合う。


「あら、もういいの?」


「ああ、もう十分じゃ……それよりも、お主には言わなければならん事がある」


 そして、突如三人は頭を下げ―――


「ネギを助けて下さって本当にありがとうございました」


「もし、お主がいなければ今頃ワシらもぼーずも他の村人と同じように石になっていたじゃろ。

 疑ってすまなかったのう」


「おねえさん、ありがとう」


 それぞれ感謝の言葉を述べる。心からの感謝を受けたのが久しぶりだったせいか、イリヤは

 表情には出さないものの、心の中に何か暖かいものを感じた。


「ふふ、どう致しまして」


 内心私らしくないかな~と思いながらもイリヤは頭を下げているネギの頭を撫でた。

 そして、撫で終わると早速本題に入る事にする。


「さて、安全が確認できたところでまずお互いの自己紹介をしたいのだけどいいかしら?」


「そうじゃの、わし達は異論ないぞ」


 そう答え、スタンはネカネとネギを見る。二人は当然のごとく賛成し頷いた。

 
「じゃあまず私から簡単に自己紹介するわね。私の名はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン

 長いからイリヤでいいわ、偶然此処を通りかかった魔術師よ」


 スカートの端を持ち上げ、優雅に一礼するイリヤ。無論必要最低限の自己紹介しかしていない。


「次は僕が! ネギ・スプリングフィールドって言います。大きくなったらお父さんみたいな

 立派な魔法使いになって、困っている人たちを助けてあげたいです」


 どこか嬉しそうに自己紹介をし、言い終わるとまた頭を下げるネギ。子供ながらも

 礼儀というものを理解しているようである。


「魔法使い…?」


 ネギの「魔法使い」という発言にイリヤは思わず首を傾げてしまう、そう彼女が知識として理解している

 魔法使いとは魔術や現在の技術では再現できない神秘、即ち奇跡を行使する者。

 そして、現在ではもう4人しか存在しない者達。この少年は本気で魔法使いを目指すのだろうか?

 そんな思考の渦にはまり込みかけたイリヤであったが、とりあえず考え事は後にする事にした。


「では、次は私の番ですね」

 
 そう言うと、ネギの隣に立つネカネ。
 

「ネカネ・スプリングフィールドです。今はウェールズの魔法学校に通ってます。

 ネギとの関係は従姉ですけど、姉弟として接しています」


 自己紹介を終えると先程のネギと同じように礼儀をする事を忘れないネカネ。

 そして、ネカネが自己紹介を終えると最後にスタンが一歩前に出て頭に被ってる帽子を手にとり、口を開く。


「では、最後に自己紹介させてもらおうかの。わしの名前はスタンじゃ、村の中で一番長く

 生きておるためか、村民の相談役をしておった魔法使いじゃ」


 そうして、この場にいる全員の自己紹介が終わる。すると終わった頃合を見計らってイリヤが口を開いた。

 

「本当なら、これからどうするか話し合うべきでしょうけど……その前に貴方達に聞きたいことがあるの、
 
 少しいいかしら?」


 そう、本来ならこれからどうするかを話し合うべきなのだろうが、イリヤはそれよりも先程から気になっていた事が

 たくさんある。此処は何処なのか、なぜスタンやネギは自分の事を「魔法使い」や「立派な魔法使いになりたい」と

 言うのか、……最低でも、此処の事と「魔法使い」の事は明らかにしておかないと、今後の対策など考えれるはずも無かった。


「質問ならかまわんよ、一体何が聞きたいんじゃ?」


 一方スタンも、助けてもらった恩義かそれとも人が良いのか……恐らく後者だろうが、すんなりと了解の意を表す。

 もちろん、ネカネやネギも異論は無かった。


「それじゃあ、遠慮なく聞くわね。まず此処は何処かしら? 気が付いたら此処にいたから良く分からないのよ」


「ふむ、此処はウェールズの山奥にある地図に載ってない小さな魔法使い達の村じゃよ」


「ウェールズ……」


 あたりの気候と風景からうすうすは感づいていたイリヤだが、まさか外国に……それも

 イギリスにまで飛ばされているとは思っていなかった。


「後もう一つ、貴方達は先程から【魔法使い】と名乗っているけれど……正気なの?」


 何故こんな所にいるのか、そんな事は後に考える事にして、イリヤは最も気になってる事を問いかけた。


「正気……とはどういうことかの?」


 そんなイリヤの質問に対して全く意図がつかめないスタン……いやスタンだけではなく、ネカネやネギも

 首をかしげている。


「だから、どうして貴方達は【魔法使い】と名乗るの? 貴方達は【魔術師】ではないの?」


 そう、イリヤからすれば当然の疑問である。彼女の知識では、世界には【魔法使い】は5人しかおらず

 内一人は既に死亡している。つまり、もう世界には魔法使いは4人しか存在していないのである。

 しかし、スタンは先程この村を【魔法使い達の村】と言った。【魔術師達の村】ならまだ分からないでもないが

【魔法使い達の村】など、存在するはずが無い。仮に4人の魔法使いが集まって暮らしても(まずありえないが)

 そこは【魔法使いの村】とは言えないであろう。それ以前に、「スタン」という魔法使いは聞いた事が無かった。

 様々な思考がイリヤの頭を巡る中、スタンはイリヤの予想を遥かに超える答えを口にした。


「はて、確かにワシ等は【西洋魔術師】とも呼ばれておるが、大体は【魔法使い】で通っておるぞ」


「嘘……そもそも【魔法使い】と【魔術師】は―――」


 そこで一旦切った。それと同時にある【仮説】が頭の中に浮かぶ。

 しかし確証がない、イリヤは自分の中に浮かんだ【仮説】が正しいかどうか判断するために


「……スタン、この世界に【魔法使い】は何人いるの?」


 という質問をした。もし、スタンの答えが「4人」か「5人」ならイリヤの仮説は成り立たない。

 反対に、「4人」「5人」以外の答えが返ってくれば【仮説】は【真実】にかなり近づいてしまう。


「【魔法使い】全体の人数か? 先程からおかしな質問ばかりするが……まあ、いいじゃろう。

 大体6700万人位かの? 詳しい数は忘れたが、その位はおるじゃろ」


 隣にいるネカネも「そうですね」と頷いている辺り、嘘では無いのだろう。


「最後にもう一つ……この世界における【魔法】と【魔術】に違いはある?」


「そうじゃな、基本的に【魔法】と【魔術】に違いはないのう」


 スタンのこの返答によってようやく、イリヤは自分がただウェールズに飛ばされたのではなく

 平行世界のウェールズに飛ばされたという事実を認識した。


「そう……ありがとうスタン、おかげで色々と自分の状況が把握できたわ」


「それは何よりじゃ」


 確かにおかしい点はあった。この世界のマナは自分の世界に比べて明らかに多いし

 なにより、スタン達には魔術行使に必要な魔術回路が存在していないのだ。

 まあ、魔術回路を持たずに魔術行使を行う者も極々稀にいる事は確かだが……


「それじゃあ、今後の事について話し合いたいんだけど……その前に貴方達に言わなくてはいけない

 ことが出来たの、絶対に他言無用を前提で聞いてくれるかしら?」


  真剣な表情で確認を取る。本来なら誰にも話したくない、無闇に自分が平行世界の住人だという事を

 ばらせば、後々面倒な事になるのは目に見えている。恐らく、元の世界では今頃士郎達が動いているだろ。

 しかし、今すぐ原因を究明して魔道元帥 キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグに接触し、無限に存在する

 平行世界からこの世界のみを特定する事は不可能であろう、少なくても最低数年は…下手をすればもっと

 掛かると予測出来る。よって、それまではこの世界で生活しないといけない。

 また、イリヤ自身もこの世界の裏を調べてみる必要がある。もしかしたら、第二魔法もしくはそれに近い

 魔術が見つかるかもしれない。だが、いくらイリヤでも何も無い状態から戸籍を偽造し裏の世界に入る事は

 かなり困難であろう。だが、この世界協力者……特に裏側の人物がいれば話は変わる。

 もし、スタンたちの協力を得る事が出来れば比較的楽に戸籍を作り、裏の世界についても調べる事が出来るであろう。

 そう考えると頼もしい味方になるであろう。また、あって間もないがスタン達は信用できる、そう考えての決断であった。


「ふむ、わかった、なにやら大事な話みたいじゃし、誓って他言はせんよ」


「私も他言はしません」


「僕も言いませんよ」


 そんなイリヤの雰囲気を察したのか、スタン達は快く同意をする。

 快く同意してくれた三人に「ありがとう」と感謝の言葉を言い、イリヤは説明をした。

 自分が平行世界の存在である事、この世界には事故によって飛ばされた事などを……
 
 そして、一通り説明が終わったところで、スタンが「ふむ」と口を開く。

 


「つまり、お主はこの世界に似て異なる平行世界の住人……という訳じゃな?」


「ええ、その通りよ……ついでに言えば、私の世界ではそもそも【魔法】と【魔術】は全く別物

 なの。簡単に言うと【魔法】は現代の技術では再現できない神秘……所謂奇跡で、【魔術】は

 現代の技術で再現できる神秘なの。【魔法】は技術が進んだ現在ではもう5つしか残ってないわ」


 イリヤの説明を聞き、ネギとネカネは驚いた表情をしている。それはそうだろう、いきなりこの世界

 とは別の世界から来ましたなんて言われて、驚くなと言う方が難しい。

 しかし、そんな二人とは別にスタンは何故か大して驚いていなかった。

 むしろ、納得したというような表情をしている。


「スタンはあんまり驚いていないわね……?」


「まあお主が先程使っていた魔法……魔術か、それを見たときから薄々疑問に思ってたんじゃ。

 何せ、杖や指輪等の魔法発動体を使わずに魔力行使を使っておったし、詠唱もラテン語

 や古代ギリシャ語ではなかった……何より始動キーすら唱えていなかったからのう。

 今の話でようやく納得できたわい」


 スタンは髭を触りながらそう答える。

 流石は老魔法使いといった所か、洞察力はかなり優れているようであった。

 ネカネのほうも冷静なら気が付いていたのだろうが、あの時はそれ所ではなかったようで

 全く気が付いていなかったみたいだ。


「そう、理解が良くて助かるわ……で、本題なんだけど―――」


「まあ、事情は聞いた訳じゃから大体は分かる。この世界で活動できるように手助けが必要なのじゃろう?」

 
 言葉を遮ってそう言うスタンに「その通り」と頷くイリヤ。


「まあ、確かに不便じゃし、お主には色々恩があるからのう。その点に対してはワシがどうにかしよう」


「ありがとう……」


 あっさりと任せろと答えるスタンに、頭を下げて感謝するイリヤ。正直こうも簡単に協力を得る事が

 出来るとは思ってなかったのだ。この世界の魔法使いはかなりお人好しな所があるかもしれない……

 と思ってしまう程である。まあ、実際はその通りなのだが

 一通り話が終わるとスタンは最後の別れのつもりなのだろうか、もう一度丘から村を眺める。

 一方イリヤも救助が来るまで少し飛ばされた原因について考察する。


「第二魔法か……宝石翁もいないし宝石剣も無いのにどうして平行世界に飛ばされたのかしら?」


 おそらく、この現状には間違いなく第二魔法が絡んでいるであろう。

 しかし、イリヤは宝石剣など使えないし、衛宮邸には第二魔法を行使できる人は住んでいない。

 当然ながら、第二魔法を行使する宝石翁が衛宮邸にいる筈が無い。

 唯一可能性があるかも知れないは遠坂凛だが、彼女は今、時計塔にいるので此方に干渉できるはずがない。

 となると、一番怪しいのはあの時蔵の中で見た……


「蔵の中で見たあの珠のせいかしら……」


 光に包まれる前に見た珠、確証は無いが恐らくそれで間違いないだろ。


「まあ、とにかく……暫くはこの世界で生活するしかない見たいね……」


 そう結論を出したときだった。


「イリヤさん、救助が来るまで色々お話しませんか?」


「おねえさん、お話しようよ」


 ネカネとネギがイリヤに声をかけた。

 別に断る理由も無いのでイリヤは「いいわよ」と返事を返し、先程までの思考を中断する。


「さて、シロウたちが迎えに来るまでこの世界での生活を楽しもうかな」


 そう呟きながら、笑顔で手を振っている二人の下に向かった。

 


 ~プロローグ編 完~


 ~続く~

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更新だあああああっ!!!!
やっと更新ですね~
待ってました!
プロローグも終わったし、次回を楽しみに待っています~
崔軍喜(Choi Goon-hee) 2007/10/21(Sun)17:09:48 編集
お疲れ様です。
待ってました
似たようなSSがないので、これからどうなるのか楽しみです
がんばってください。

オファニム 2007/10/22(Mon)22:22:58 編集
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