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主に二次創作(現段階ではネギまのクロス物)を載せようと思うブログ
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(さて、どうしようかな?)

 
 先ほど助けた赤毛の少年を後ろに庇い、銀髪の女性 イリヤは目の前に群れる異形の悪魔達への対策を考え始める。


「はあ、シロウがいればこの程度の数すぐ終わるのに……」


 そう、いつもならばこの程度の数は士郎が前衛にでて戦いイリヤが後援支援をする。

 それだけで事が済むのだが、今はその主戦力たる士郎がいないのだ。

 一人ならばどうにでも出来るのだが、イリヤの後ろには少年がいる。

 即ち、自分一人で後ろに庇っている少年を守りながら事態の収拾をしなくてはならない。

 少年を守りながら戦う場合相手が10匹以下なら出来ないことは無い、

 しかし異形の数はざっと数えて50は確実に超えている。

 魔力量は問題ないものの、はっきり言って今の状態のイリヤでは圧倒的に不利であった。

 A判定の大魔術を何回か行使すれば一掃する事も可能かもしれないが、

 目の前の敵は詠唱する時間もくれないだろう。

  魔術触媒や補助礼装は衛宮邸に置いてきてしまった為持ち合わせが無い。

 ならば、二小節以下の魔術で少しでも数を減らして隙を見て脱出するしかないだろう。

 アレを起動するのも時間が掛かる。

 
 だが、考える時間を与えるほど目の前の異形の悪魔達は甘くなく、

 翼を持った二体がイリヤと少年に襲い掛かった。

 そんな異形に対してイリヤは思考を即座に中止して左腕を向ける。

  
 ドガガガガガ!!!!!


 そしてイリヤの手から放たれた無数のガンドが二匹を襲い掛かる。しかし……


「これで倒せたら良いのだけど……やっぱりガンド程度じゃ一匹しか無理か」


 一匹は葬ることが出来たようだが、二匹目は殆どダメージを負っている様子はなかった。


「おねえさん……大丈夫なの?」


 少年が心配するように涙目でイリヤに問いかける。


「……ふふ、大丈夫よ。貴方は私が守ってあげるから」


 前にいる悪魔達から目線を外さず少年を宥めるように言うイリヤ。そしてガンドに耐えた翼を持つ悪魔が

 再び襲い掛かろうとする。それを見て再び魔術を放とうとした時! 

 突如目の前にローブを被った男性と思われる人影が現れた。


「――――雷の斧!!」


 非常に強力な雷の斧が有無を言わさず悪魔を切り裂く、切り裂かれた悪魔は断末魔を

 上げることも出来ずに消滅した。

 男は止まらない、悪魔が消滅したのを確認すると50体はいるであろう悪魔の群れに突っ込む。

 恐らく体を魔力で強化しているのであろう、一瞬で悪魔達の中心に潜り込むと体術を使い吹き飛ばす。

 そして、一旦ある程度距離を取った。


「――――来たれ雷精、風の精 雷を纏いて吹きすさべ南洋の嵐!!」


 男の呪文詠唱により右腕に強力な魔力が篭る。


「――――雷の暴風!!」


 詠唱が完了し、魔術が完成する。そして、男の右腕から信じられない程強力な雷の波動が放たれた。

 放たれた魔術は悪魔達だけではなく、その延長線にあった一つの山を吹き飛ばす。

 あっという間に目の前にいた50以上の悪魔は滅んだ。そして、男は辺りを見渡して他にいない事を確認すると

 ゆっくりとイリヤと少年のほうに歩いてくる。

 イリヤは助けてくれた事から敵ではないだろうと予測するものの、

 警戒は解かずにいつでも後ろの少年を抱えて脱出できるように身構える。

 戦うなどとは論外、先程の魔術行使をから見て今の状態で勝てる確率はほとんど無いだろう。

 
「……あんた何者だ? 少なくても此処の村の住人じゃあないだろ?」


「あら? 人の名前を聞くときはまず自分から名乗るのが礼儀じゃないかしら? 

 それにそのフードも外してもらえる? 少なくても私は素顔を隠したままの人間に話す事は無いわよ」

 
 銀色の髪をかきあげながら言うイリヤ。


「確かにあんたの言う通りだな、俺の名前はナギ・スプリングフィールド……この村出身の人間さ」


 フードを外しながら答える男性 ナギ・スプリングフィールド その素顔は赤い髪といい顔立ちといい後ろに

 庇っている少年に何故か似ていた。


「……名乗られたのなら私も名乗らないとね。私の名前はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン、普通の魔術師よ」


 この村の出身で更に先ほど此方には見向きもせずに、真っ先に悪魔達を滅ぼしたという事は

 恐らく味方なのだろうと推測して構えを解くイリヤ。

 それでも最低限の警戒は忘れていない。いつでも動けるよう重心を下げる。


「……まあ、この場にいて一般人って事はないよな。じゃあなんであんたはここにいるんだ? 

 こんな田舎の村に」


 どう答えるか本気で悩むイリヤ。正直の所何故自分が此処にいるかは全く分かっていないのだ。

 かといって先程立てた仮説を話すのもどうかと思う、だから……


「たまたま通りがかっただけよ、別に理由なんて無いわ。ただ、森を抜けたらいきなり燃えているこの村が

 見えたから助けに来た……ただそれだけよ」


 と答える。別に嘘は言っていない、正直この村を見つけたのも偶然だし、人を助けたに来たのも事実だ。

 

「なるほどな……」


「お……おとうさん?」


 ふと先程助けた赤毛の少年がナギに近づく。「お父さん」という言葉から恐らくこの二人は親子であろう。

 
(ふーん、道理で顔立ちも髪の色も似ているわけね……でも如何してこんなに違和感を感じるのかしら?

 まるで彼らの様に……)

 

「…お前がネギか、大きくなったな」


 ナギがネギの頭をやさしく撫でる。そして顔だけをイリヤの方に向けた。


「あんたがネギを助けてくれたんだな?」


「ええ、私が助けることが出来た人はその子だけよ……」


 ナギは撫でるのを中断して立ち上がりイリヤに頭を下げる。


「そうか、コイツは見ての通り俺の息子でな、あんたが居なかったらこの子も助かっていなかっただろう。

 礼を言わせてくれ、ありがとう」
 

「ええ、だけど他の人は間に合わなかったわ……」


「あんたのせいじゃない、むしろこれは俺の責任でもある。息子を助けてくれて本当に感謝している」


 俯きながら言うイリヤにナギは頭をあげて言う。その表情は何故か儚く見える。


「お父さん! 此処に来るまでにネカネお姉ちゃんとスタンお爺ちゃん見なかった!?」


 少年 ネギはやっと会う事が出来た父親の手を引っ張りながら問いかける。


「いや、見てないな……」


「いそいで探さなくちゃ!」


 ネギが父親の手を掴んだまま更に奥へと進もうとする。


「そうだな、イリヤスフィールって言ったか、あんたも付いて着てくれるか?」


「ええ、そうさせてもらいたいけど―――」


 言葉を切りイリヤは辺りを見渡す、ナギも周囲の異変に気が付いたらしい。

 そう、いつの間にか先ほどの倍以上の数の悪魔達が集まっていたのだ。


「―――探す前に此処に集まってきた悪魔達を殲滅した方が良くないかしら?」


「確かにな、大方さっきの『雷の暴風』を見て集まって来たんだろう……なあ、あいつらは俺が

 片付けるからその間ネギを守ってくれねえか?」


「分かったわ。貴方の息子は私が守ってあげるから、安心して戦いなさい」


「ありがとよ!」


 ネギをイリヤに預けて杖を片手に先ほどと同じように悪魔達に向かって走るナギ。

 イリヤは頼まれた通りネギを後ろに庇い、念の為に魔術行使の準備をしておく。

 
「す……すごい、お父さん」


 悪魔達と交戦しているナギの姿を見てはしゃぐネギ。ナギの戦闘能力は凄まじいの一言であった。

 無論魔力で身体強化しているが、それでも一度に10匹近くの悪魔達を体術で軽々と吹き飛ばし、

 彼の行使する雷の魔術に当たった悪魔は例外なく消滅する。全く隙が無かった。

 ならばと悪魔達も時間差、多方向、同時と様々な攻撃を仕掛けるがその攻撃も、

 彼は悪魔の攻撃を魔法障壁で防いだり、時にはかわしたりして身体に当たることは無い。

 村を襲った悪魔達が消滅するまでにそう時間は掛からなかった。

 ナギは最後の一体を葬ると小さな溜息をつき、少し透けてきた自分の左手を見る。

 その様子を見て、イリヤは全てを悟った。


「道理で違和感を感じるわけね、その身体は魔力によって編まれたもの……か」


「気づかれたか、あんたの言う通り、この身体は魔力によって編まれているもの……時間

 経過と共にいずれは消え去る存在さ」


「で……あと現界時間はどの位残っているの? 私が見る限りもう殆ど身体を構成している

 魔力が霧散しているみたいだけど?」


「ああ、その通りだ。後よくもって5分って所だな」


 先ほどの戦闘時に身体を構成している魔力まで使ったのだろう、ナギの身体は殆ど透けていた。

 
「お父さん……どこかに行っちゃうの?」


 今まで黙っていたネギが二人の会話を聞いて、目に涙を浮かべながら問いかける。


「すまねえネギ、もう時間がねえ。悪いなお前には何にもしてやれなくて……」


 泣いているネギの頭をナギは再びやさしく撫でる。


「……そうだ、お前にこの杖をやろう。俺の形見だ……」


 そう言い、持っている杖をネギに渡す。手渡された杖は幼すぎる少年には大きすぎて

 ネギは大きくよろけてしまう。それでも杖は落とさなかった。

 そんな息子の様子を見て「はは」と笑うと、ナギは再びイリヤと向き合う。


「イリヤスフィール殿、貴方に頼みがあるのだが聞いてもらえないか?」


「――貴方の息子をこの件が終わるまで守って欲しいの?」


「ああ、もしかしたらまだ悪魔が残っているかもしれねえし、ネカネやスタン爺さんも見つかっていねえ……

 恐らく数日中には救助隊が駆けつけると思うから、その時まで俺の息子を守ってやって欲しい。宜しく頼む」


「分かったわ、貴方の頼みは私が引き受けてあげる。この子は私が責任を持って守るわ」


「ありがとう……」

 
 ナギの身体がゆっくりと宙に浮き上がる。


「ネギ、こんな事言えた義理じゃねえが元気に育て……幸せにな!」


 そしてナギの身体を構成していた魔力が静かに霧散する。ナギの姿は空へと消えていった。


「お父さん……」


 父親が消えていった空を見上げるネギ。しばらくそのまま間をおきイリヤはネギに話しかけた。


「さて、そろそろ移動しない? 早くネカネさんとスタンさんを探すんでしょ?」


「―――うん」


「それじゃあ行きましょうか、何処かその二人が居そうな所の心当たりはある?」


「…………ここから少し離れた所にスタンお爺ちゃんの家があるんだ。お爺ちゃんの家は

 普通の家より安全だから、多分其処にいるとおもう……」


「確かにこういう状況下なら安全な所に移動するのは当たり前よね。じゃあ案内してもらえる?」


 
 そうして二人はゆっくりと歩き出した。

 

                          ―――続く―――

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コメント
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どうもはじめまして。
珍しいタイプのFateクロスなので期待してます。
がんばってください。
オファニム 2007/06/29(Fri)22:51:42 編集
はじめまして
イリヤがネギま!世界に行く作品は始めて見ました。
期待しながら次の更新待ってます
エビフライ 2007/07/02(Mon)19:20:56 編集
楽しみ、楽しみ~
さて、ネギを助けるイリヤ。
どころで、ひとつ疑問、ネギま!の世界では魔術と魔法との区別がなかった筈では?なのにナギ、イリヤの魔術師という発言に問題していない。
崔軍喜(Choi Goon-hee) 2007/07/24(Tue)02:12:09 編集
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